題名と表紙の絵からエリート意識ふんぷんとした鼻持ちならない小説というイメージを持っていた。読んでみると どの小説も思わず笑ってしまうような頼りない男が主人公で、東京帝国大学文学部卒業という輝かしい経歴を窺わせるようなものは全く感じられない。一つ一つの短編が面白く読めるのに、後まで心に残る。
なるほどこれが純文学の力かと感心させられた。
講談社文芸文庫は少し高いので,心配な人は
新潮文庫のアメリカンスクールを味見して下さい.村上春樹も紹介しているように,
新潮文庫の中の「馬」という短編が,この本の下敷にあるようです.「馬」や「アメリカンスクール」を読んで面白いと思ったら,是非この「抱擁家族」を読まれることをお薦めします.個々の文体は平易で軽いというか,不思議な感覚です.歌で言うと一般の人とちょっとはずれたキーなんだけどはずしてない,という感じでしょうか.しかし,全体の構成はハードというか,読後はずっしりしたものを感じます.さっと読めるんだけど,結構残ると言うか,とにかく読んで下さい.
僕も何年か前に家を手に入れましたが,その中身の家族はどうなのか,どうしたいのか,そんなことを考えながら読みました.