著者はアメリカの脳神経解剖学者だ。37歳の時に左脳内で血管が切れ、脳卒中となる。左脳の機能がマヒした状態から、手術を経て、回復に至るリハビリ物語でもある。以前、TV番組(NHK?)で著者のストーリーは見て知っていたが、本が出ていたことを知って読んだ。脳科学者が左脳マヒ状態を自ら経験し、自己観察するというある意味では希有な体験を語ったものだ。
左脳が機能マヒを起こしたことによって、著者は言語を失い、数字と文字を判読できなくなり、自分と世界の境界が分からなくなる。同時に自分は世界と一体だという不思議な涅槃感覚にひたる。それは右脳の感じる自己と世界だったと気づく。
左脳から血の塊を除去する手術を受け、死んだ左脳の回路を母に助けられながら、一歩一歩回復するリハビリの経過が語られている。「失ったこと、できないことを悲嘆するのではなく、ひとつひとつできるようになったことを喜ぶ」ことでリハビリのプロセスが、ポジティブな感覚でつづられている。
後半部では右脳と左脳の機能的なコントラストについてわかりやすく、文字通り著者の経験談として書かれている。右脳は感性的で今の瞬間のことに傾斜する。左脳は計画的、分析的で、過去から未来への時間感覚の中で行動を管理している。現代社会はある意味で左脳優先、左脳支配の環境だと言えるだろう。左脳は自分と他者を比較して妬んだり、卑屈になったりネガティブな感情の源泉にもなっているという。
結局、著者は右脳の価値に覚醒することで、左脳のネガティブな面の復活を抑制しながら、右脳と左脳のバランスをとることができるようになった。確かに現代社会は左脳の全力疾走を要求するようなストレスの多い社会だ。左脳の暴走を抑え、右脳スイッチを操ることができるようになれば、人生はより豊かになるというのが貴重なメッセージであろう。
日本のアヴァンポップロックバンド、ワ・ハ・ハの1st。1981作
サックスの坂田明を中心に、小川美潮、神谷重徳、村上“ポンタ”秀一、千野秀一らのメンバーで
本気の冗談としての音楽を、インプロヴィゼーション溢れるサウンドで作り上げた作品。
フリー
ジャズ的なアプローチに、テクノやポップなどの味付けで、既成の音楽概念を打ち破るような
自由度の高い楽曲(?)を構築(?)しており、小川美潮の少女めいたスキャットも含めてとても個性的。
曲としてちゃんと聴こうと思っては楽しめないが、アヴァンギャルド系のプログレが好きな方には
むしろ分かりやすいかもしれない。今のバンドでいうと美笑あたりにも通じる質感がある。
この後バンドは2作目「げたはいてこなくちゃ」を発表、いっそうの破天荒さに磨きをかけるも、その後解散。