東洋一を決定する幻のカラオケ選手権への招待状は
第一巻で一陣の風に舞い上げられて散った。
この連作短編の物語すべて、吹いていく風のバラッド。

あれ、これでおしまいなのか――と戸惑う読者も少なからぬと聞く。
ストーリーに余白を残すのは狩撫麻礼の常套手段だ。
過去の作品群でも用いられてきた狩撫の手口だが、
この作品では思い切った大胆な省略が試みられている。
運び去られた物語の跡地で鳴り響く幽かな残響に読者は耳をすまさなければならない。

原作者は、ストーリーのテキストをいったん綿密に組み上げたうえで、
そこから様々な要素を差し引いて画家に預けているのだろう。
狩撫が引き算で書いたシナリオ。
たなか亜希夫の緻密な画風。
対照的な、このふたつの間の残響音を聴きたい。

二十数年前と何一つ変わらない久保田が 木村が
そして八須賀が

それだけで★★★★★

実は３巻が性に関するエピソードが多く、ちょっと下世話すぎて（生きていく上では大事な要因のひとつですが）
ほかの巻と比べてあまり好きではなかったのですが、４巻は奥の深いエピソードが多くて好きです。

人の過去と現在、そして確証はないけど希望くらいはを持っても良い未来。

おそらく人によって好きなエピソードは分かれるとは思いますので、このエピソードが良いって無理強いをすることはできませんが、
いい大人なら、グッとくるエピソードが必ず一つくらいはあるはず。

「わからないことはいっそ知ろうとしないほうがいい・・・」
その心境は共感できます（決して興味がないんじゃないのですが）。