松本清張作家活動40年記念として1991年にテレビ朝日が制作した作品。
松竹映画版より原作に近く、2時間の枠で複雑な原作をテンポ良くうまくまとめています。
犯人を憎み必ず手錠をかけてやるという強い執念を持つ今西刑事を
田中邦衛が、そして冷酷で狡猾な犯人・和賀英良を
佐藤浩市が好演しています。
捜査を積み重ねて和賀が犯人だと推測されるも、自殺や殺害により証人は生存せず物的証拠もなく、結局逮捕は和賀の自供によるしかないことになる。「和賀英良は冷酷な男だが、本浦秀夫は違うと思う。私はそれに懸けてみる」として今西が真正面から和賀と向き合い自供に追い込んでゆく。これは映画にはなかった場面で、じっくり時間をかけていてこのドラマの見所です。
もちろん松竹映画版は深く感動しましたしいろんな意味でよい作品でした。一方このドラマは刑事ものの色合いが強く映画とはまた違った良さがあります。
「砂の器」のテレビドラマは、原作発表直後に制作された1962年版をぜひ見たいのですが、残っていないのでしょうね。1976年・2004年・2011年版はそれぞれDVD化されています。ぜひこの1991年テレビ朝日版もDVD化して欲しいですね。私の好みは別にして、それぞれ特徴があり制作者の意欲は感じます。1976年版はレンタルで二度見ましたが、2004年版は一度見れば十分でした。2011年版はこの1991年版と同じくテレビ朝日制作、脚本家も同じです。豪華キャストの演技、特に1991年版同様こちらの主役の吉村刑事が和賀英良を自供に追い込んでゆくのは見応えがあります。ただしテーマが弱く女性記者の存在が興ざめです。録画を残しているので、DVDを購入したいとは思いません。1991年版のDVDが発売されたなら、購入しても良いと思います。