平泉が世界文化遺産に登録されたことで、
観光、歴史の中にようやく登場した
奥州藤原氏の詳細な歴史書である。
どちらかといえば、奥の細道などに先行された
過去の栄華的見方から一転、積極的な歴史として
考察されている。
坂上田村麻呂以降の東北地方の空白の歴史
についても、少ないながら、安倍氏、清原氏、
前九年の役を通し言及されている。
重要なポイントは、彼らが一貫して朝廷に反抗し
蝦夷が政治的にまとまろうとしたという従来の見方
とは別に、平安後期の院政の一環として、
蝦夷の支配を任されたという見地、それ故
奥州藤原氏の
隆盛を可能たらしめたという考え方だ。
源頼朝により滅ぼされるまでの奥州藤原3〜4代の
栄華は、今では
平泉に残されるのみである。
しかし、その文化は「鎌倉」に先んじて世界遺産に
登録され、今彼らの精神的高貴さが、現代の我々や
世界に認められたのである。
奥州藤原氏と朝廷・武士(中央権力)との関係が、
「フクシマ」と一部重なり合ってしまうのは、
私だけだろうか。
末筆だが、不屈の精神で復興されることを願って止まない。
奥州藤原氏を知りたく本書を購入しました。
高橋氏の著作は「蝦夷」「蝦夷の末裔」と読み、その読み難さに辟易したのですが、
本書は先の2冊を読む2年も前に購入済みで、覚悟を決めて読み始めました。
まず、
平泉館の炎上の話から始まります。
泰衡は逃亡する際に館に火を放ち、全てを灰にしたそうです。
つまり、
平泉に残されていたはずの資料は、全て失われたそうなのです。
奥州藤原氏を語る資料は、公卿が遺した日記、吾妻鏡、あるいは軍記物語に頼るしかありません。
本書を読んで分かったことは、資料が乏しいこと、
奥州藤原氏は藤原鎌足の末裔であること、
中尊寺に残された藤原氏三代の遺骸から病歴や死因が推定できることです。
本書は、限られた資料を丹念に読み解いた学術的なもののため、気軽に読める内容ではないです。