個人的に印象に残った点を記す(商品としてよりも作品として)。
・"コメディアン"
藤田まことの起用は、黒澤作品での伴淳三郎、植木等、いかりや長介、所ジ
ョージを想起させ、必殺シリーズファンの私もかなり期待したが、抑揚をきかせ枯れた感じ
を出しながらも、気骨を失わない主人公を見事に演じていてとても良かった。劇中で何度か
歌うシーンもあり、うますぎる感がなくもないが、藤田ならではと思った。
・本作品の最大の収穫は、フレッド・マックィーンが見られたことだ。個人的には一番光って
いたと思う。全く父親を偲ばせる風貌(特に眉・目・唇の雰囲気)には感動した。法廷で岡
田中将から「Good Morning, Major!」と言われて一瞬見せた笑顔が忘れられない。日本映画
で外国人の俳優が印象に残った稀有な例として記憶されるべき作品だ。
・死刑台へと静かに歩む岡田中将が満月を見上げるシーンで、照明がTVドラマ並みに明るすぎ
ると思った(DVDで見たので余計にそう感じたのかもしれない)。黒白映画並みに明暗のコ
ントラストをもっと強調してもよかったのではないか。
・最後に、エンドロールに流れる音楽について一言。最後に主題歌がながれるのは日本映画に
よくあるパターンだと思うのだが、TVドラマではないのだから、映画作品としてオープニン
グからエンディングまで一貫したトーンをストリクトに保ってほしかった。本編が良くても
エンディングの主題歌で全体の雰囲気がガラリと変わってしまう作品が結構あると思う。
藤田さんの死はショックでした・・・。
年齢的にまあ当然と言えなくもないのだけれど、
それでも、悲しかった。
そのうえ今の地上波テレビは、藤田さんのような
ビッグネームがお亡くなりになっても、
森繁久弥さんや山城新悟さんが他界されても、
全盛期の映画やドラマを放送してくれません・・・。
藤田さんの本当の代表作と言えば、
「てなもんや三度笠」であり「必殺仕置人」です。
異論のあるファンの方もいらっしゃるでしょうが、
「剣客商売」や「はぐれ刑事」や、
80年代の「必殺仕事人」ではありません。
ご自分の死の後のテレビでのあつかいなど、
天国の藤田さんは笑顔で、
「わかってまっせ〜。世の中そんなもんですわ。
でも僕のことよう見てくれてる人もおりますわ」
と軽〜く受け流してらっしゃるでしょう。
そんな風に思うほど、この本に描かれた
藤田まこと、
という人物の人生は苛烈です。悲惨です。
でも、藤田さんの姿勢・表情は常に笑顔、
だと感じさせる自伝になっています。
加えて、師匠辰巳柳太郎さんへの想い、
辰巳さんを介した若山富三郎さんへの
想いなど、実に謙虚で折り目正しいのです。
他にも、黄金期の「必殺」シリーズの現場の印象として、
「あの番組は名だたる監督が来て、
好き放題やっていました」
と痛快な証言を残されていたり、
奥様との事業での大借金に触れた部分で、
きっかけは、他の中小企業の倒産含めて、
当時の大蔵大臣、橋本龍太郎が発した
「不動産融資総量規制」にある、と
指摘されていたりで、読めば読むほど、
為にもなり、深く考えさせられる本です。
ドラマと違って、私生活の藤田さんは
悪を罰する仕置人ではなく、むしろ仕置人や
仕留人や必殺商売人に無念を託して死んで行く、
頼み人の状態であったのです!!晩年は!!
なのに彼は笑って闘った。
藤田さんありがとう!!
男主人公と女主人公、二つの視点(たまに脇役視点)が切り替わりつつ進むタイプの作品。
公式ホームページ上において、
主人公同士以外の18禁シーンはありません、FDも製作の予定はありません。・・・と明記されており、
ずいぶんと潔い姿勢を見せるなあと思いつつプレイ。
・ボリューム
ヒロインが一人だけにしては、十二分な量があるかと。
本編は選択肢によって、メインに関わる脇役が違ってくる3ルートに分岐します。
3ルートクリア後に、いわゆる最終シナリオがオープンされる形。
読了まで、スキップ無しで約16時間ぐらいでした。
・内容
男女主人公があれやこれやの果てに引っ付く青春もの、というべきなのか・・・。
まあ
タイトルが「恋ではなく」なので、そう単純なものとも言えず。体験版でしっかり判断を。
三角関係っぽい展開もありますが、陰湿ドロドロなゲス野郎とかは一切存在しないので、安心して
プレイしましょう。というか良い男ばかり。
・音楽
クリアしても、記憶に残ってないです・・・。
静かで邪魔にならない、と言っときます。
・システム
一通り揃っていて、特に不満は無し。作中やたら頻出するカメラ用語のためか、TIPS機能が
ありますが無視しても問題なし。
というかマニアックすぎて、それがあってもよく理解できません。
全体として非常に良作ではありますが、やはりヒロインが一人のみとなると
値札とのにらめっこは避けられないか、といったところ。
自分のように、体験版をプレイしたら続きが気になってたまらない、という人ならば
裏切られることは無いでしょう。