イギリス人の夫と結婚後、
ロンドンに移住して16年目を迎える著者が、日々の生活で気づいた事柄を漫画と文章で綴ったエッセイ集です。
著者の
ロンドン随想は、2000年に『
キリコ・ロンドン』、そして2002年に『
中級キリコ・ロンドン』が刊行されていて、どちらも大変楽しく読んだことを良く覚えています。
前半は期待通り、興味深く読ませる文章が並んでいて、例えばCase.08「
ロンドンの公園のベンチ」は、故人を偲ぶためにその名を刻んだベンチを遺族が公園に寄贈するという習慣について紹介しています。著者自身も義父の名を刻んだベンチを、著者の夫を幼少期に連れて遊んでくれた児童公園に設置した体験を綴っています。申請してから実現するまで3年もかかったとかで、それだけ待たされたのは、ひとえに希望者が多いからだといいます。
Case.12「本を読まない伝統」によると、イギリスでは女の子の本と男の子の本が日本以上にきっちりと分かれているそうです。もともと男の子が読書をしないという状況を打破しようと、男の子をターゲットにした本を出版したところ、女の子が読まない本が出来てしまったというのです。また、労働者階級出身のサッカー選手は本を読まないというイメージがあるとか。だから読書家のサッカー選手はゲイ扱いされることも。
しかし後半にいくほど、これといって心動かされるエピソードが登場しなくなっていく印象を受けました。筆遣いも思いのほか淡白に感じられます。
「AERA English」とNHK「
英会話入門」に掲載したエッセイが基になっているということですが、紙数が限られていたのでしょうか。
ちょっと残念な気がしました。