ユーミンのデビュー時にバックを務めた一人のミュージシャンが見た、有名アーティストの伝記では味わえない、音楽ファンにとっ
て実に興味深い日本POP MUSIC界の追想記です。あの時代の空気がページから漂ってきます。
この本を読んだのは、事前知識はなく著者も知らないまま、街で偶然手にしたのがきっかけです。まず
タイトルの「名もなきミュー
ジシャンの手帳が語る・・・」に惹かれました。そしてページを開いた途端、面白くて、即購入して、その日の内に一気に読んでし
まいました(笑)。
この本を見かけた時、”有名ミュージシャン等の視点からの本は飽き飽きだけど、この本からは普段落とされがちな、リアルな業界
現場の空気とか(スキャンダルも何もない)真面目で実直なミュージシャンの事とか、職業としての観点からの裏方ミュージシャン
の話が聞けるかも?”と直感致しました。そして正にその通りの内容でした。
この本は、それまで有名アーティストの視点だけで語られてきて、マス的には無視されてきた業界の世界を、”名もなきミュージシャン”
達を通じて、時代の空気と共に鮮やかに蘇生させてます。誠に希少な内容/証言だと言えます。そして、日本のPOP音楽が一番幸せだっ
た(?)70年代〜80年代を中心に熱心に音楽を聴いてきたファンには、音楽を通じたあの頃の世相が立体的に再現されてきます。
ユーミンに関して言えば、私もデビュー時から知っているユーミン・ファンでもあります。なので、ユーミンがブレイクする迄を雑誌
やラジオ等のメディアを通じて彼女の動きをなんとなく覚えていたので、この本を読んでユーミンの当時の姿を、より立体的に再現で
きた気がします。
余談ですが、ユーミンの著書(『ルージュの伝言』)にあったバックバンドに記述がずっと気になっていたので、まさかそのバック
バンドからのエピソードが聞けるとは思ってもいませんでした。そのお話は本当に希少であり興味深い内容です(注:決して暴
露系のお話ではありません。本当は暴露話も沢山あるのではないかと推察致しますが、でも著者はそんな下世話な事をお書きになる
方ではない印象です。以上念のため。)
この本を積極的にお勧めできる読者は、例えば当時の業界関係者とかを除けば、氏と前後して日本の音楽シーンを伴走してきた往年の
熱心な音楽ファン、また「ひこうき雲」で再ブレークした?(松任谷ではなく)”荒井”由実のファン、特にパパレモンとかダディー・
オーの名前を憶えている方は是非ご一読ください。興味津々の内容です。そして、ニューミュージック勃興時からの音楽シーンを(完全
ではないにしても)リスナーとしてだけではなく、裏方からのお話を含めて立体的に捉えたい方には特におすすめです。
このような内容の本が世に出たことを慶びつつ、往年の熱心な音楽ファンには是非目を通して頂きたい本です。