全体に画面が暗いことと、高校生が泣き叫んだり、自殺未遂、殺人があったりと、暗く後味の悪い映画ではないかと危惧して鑑賞したが、予想は見事に裏切られた。演劇をライブでみているような雰囲気が味わえる楽しい2時間。主役は、高校の演劇部に不満だったため、自分たちで劇団“羅針盤”を作った高校生4人。それぞれ家庭などに悩みを抱えているものの演劇に対する情熱は高く、ストリートパフォーマンスから、4人が手作りで助け合ってコンテストに向かって取り組んでいく。彼らが作り上げた設定の劇が、数場面のみを紹介するのみで、劇中劇として、ほぼ完成しており、内容もコミカルであって、また生きることのメッセージも入っており素晴らしい。この部分が映画の大部分を占めるのだが、これは4年前という設定で、これに並行して現在の部分のドラマが織り込まれ、羅針盤のメンバーの一人が、他のメンバーによって殺されたのではないかという謎が、ラストに向かって解き明かされていく。現在の部分も、謎の犯人?と目される人物が女優という設定で、そのロケ先で物語が進行するので、ラストの演出が、演劇のような多少芝居がっかったものとなっているのも違和感はない。進行しているドラマが劇中劇かもしれないと思わせるような狙いもあったのではと思わせるような出来で、全体に芝居がかった熱い演技は、見ていて気持ちがいい。暗い話題も多少あるが、後味は爽やかで、4人の主役陣には好感が持てる。主演は
成海璃子だが、忽那汐里がキネマ旬報新人女優賞を受賞。他には、黒川智花が、羅針盤のメンバーの一人の美しい姉を好演。
島に流れつく死体、狂気的な女の行動の謎、「星籠」という歴史上の秘密、猟奇的な誘拐事件、強大な犯罪者との対決…作者の故郷の
瀬戸内海を舞台に、御手洗の縦横無尽の活躍が存分に楽しめるスペクタクルな大長編。
超人的な御手洗潔の頭脳と"権力"がなければ解決しえない事件だったろう。「梅沢家の
占星術殺人」から作中時間で14年でよくもここまで、と感慨も深い。御手洗ものの「国内最後の事件」としては、よい事件譚だったと思う。『暗闇坂』以降の広大なスケール感が好きな人には、とてもオススメ。国内を舞台によくもここまで大きなスケールの物語を書けるな、というあたりは、さすがは「ミステリー界の巨匠」。
だけど。第9章の冗長ぶりはなんとかならなかったものか(第2章のあれにはまだ説得力があるのに)。半分の分量に収まっていれば、またはその分、犯人の極悪人ぶりがさらによく書けていれば…。素直に「傑作」と呼べる要素はたくさんあっただけにもったいない。
破綻はしていないが、書きどころのエネルギー制御がうまくいかず暴走してしまった感じは否めない。それもまた「巨匠」ならではなのか…。80年代の「時代の反逆児」だった島田荘司を知る者には、ビッグネームならではの"権力"を纏ってしまった作者には、思うところも多いだろう。