密会 (新潮文庫)
安倍公房による、1977年の長編小説。
社会には催淫表象が遍在している。文化的・欺瞞的意匠を施していても、一皮剥けばそこには性的欲望の蠢きがその生々しい貌を出す。現代社会を駆動させているものは、およそすべて「性」に根源をもっているのであるかのように。
"それにしても、べらぼうな音の氾濫だった。追従、怒り、不満、嘲笑、ほのめかし、ねたみ、ののしり・・・・・・そしてそれらのすべてにちょっぴりずつ滲み込んでいる猥褻さ。"
人間は、その剥き出しの性的欲望、セックスの無間地獄に落ち込んでいくしかないのか。ところでいま「地獄」と表現したが、そもそもそれは本当に「地獄」だろうか。「セックスは現代人に残された最後のオアシスだ」とは20世紀アメリカの作家ヘンリー・ミラーの言である。性の「地獄」に溺れていられるうちは、まだ幸福なのではないか。堕ちていく「地獄」が未だ仮構されている限りに於いて。性愛の幻想に目眩まされている振りをしていられる限りに於いて。その時には、未だ帰る場所が在ることになっているのだ。
人間とは、常にそこから(そこがどこであれ、そこから)引き剥がされる以外にない存在ではないか。とするならば、性そのものにさえ倦怠を覚えてしまえる存在ではないか。記号化・パターン化された性的意匠の順列・組合せは、所詮は有限なのだ。いつか、性による精神の暗い躍動すら存在しなくなり、ただただ形式を反復するだけの、自己完結的な自動人形のようになる日が来ないと云い切れるか。機械的な運動とそれに対する生理的反応以上ではなくなってしまう日が来ないと云い切れるか。今日の快楽が昨日の刺激の残夢となる日が来ないと云い切れるか。ヘンリー・ミラーに従うならば、性への倦怠こそ、日常性という受難の始まりではないか。そして倦怠は終わらない。
地獄も、追われれば、ユートピアだ。
よくわかる金型の原価管理とコストダウン―実践的査定テーブルの作り方
本書は、商品を開発する際の金型について分かり易く説明しており、金型を発注するときに役にたった。特に、査定テーブルが必要な金型の仕様を考えるのに有用であった。これまで、金型メーカーにエイヤーで発注していたものが、コストおよび仕様をメーカーと話合えるようになった。
Meet Me in Istanbul (Macmillan Readers)
休暇を利用してイスタンブールにいる婚約者に会いに行ったトムは、彼女が死んだと聞かされる。彼女の死を信じられないトムは、機内で知り合った青年の助けを借りて独自に調べ始めるが・・・。といった感じの内容です。軽いクライムサスペンス。ありがちな内容ではありますが、多読に慣れてきて少しストーリーのある物を読みたい人にはいいかも。難しい単語もあまりなく、あっても読み飛ばして全くストレスになりません。ただ個人的には、トータル55Pと思ったより短かかったのが不満。