2010年12月、丸の内の三菱
美術館で開かれた“カンディンスキー「青騎士」展”を見た。
最も印象的で、絵の前からしばらく動けなかったのが、「印象'V<コンサート>」。
これはカンディンスキーが具象絵画から抽象へと突入するきっかけになった
美術史的にも重要な作品。
タイトルにもあるように、彼が音楽会で聴いたのが、シェーンベルクの「弦楽四重奏曲第2番」と「3つのピアノ曲」だった。
このシェーンベルクの本はとてもよくできている。
構成も、翻訳も。1959年生まれの訳者による文章は読みやすく現代的な息づかいがあり、
こうした本では珍しく、自然に笑えてしまう箇所があるほどこなれていて、
それが最後の一ページまで貫かれる。
本文が終わると1ページ大のシェーンベルクの素晴らしいポートレート写真。
他の写真や楽譜などの図版のセレクトや挿入もよく考えられていて、丁寧、適切。
巻末に作品目録、年譜、同時代人たちの証言集がある。
店舗で見かけなくなったのであきらめていましたが Amazon で見つかりました。
個人的には20年前のインバル・フランクフルト放送交響楽団の演奏が一番気にいってますがそういう観点ではこの演奏は盛り上がるところで急にペースダウンしてしまう点が最初は気になりました。
それでもにぎやかだし、うまくまとまっていると思います。
DVD で見ると大編成で楽団員の方が窮屈に演奏しているのがよくわかります。
因みに20年前のインバル・フランクフルト放送交響楽団の時の合唱団・合唱指揮者がこの演奏にも加わっています(時がたってますし
ドイツ統合の影響などで当時とはだいぶ違っているようですが)。
Andersen は最近のグレの歌の録音(ヴァルデマール役)でたびたび登場するようです。
第一部の最後に山鳩役の藤村さんが登場します。
ボーナストラックには「導入」がありますが
ドイツ語です。
初めて聞く方向けの簡単な解説をすると、これがシェーンベルク?と思ってしまうような曲想の歌曲です。
ヤコプセンの詩(「サボテンの花ひらく」)の中のデンマークのグレに伝わる実話に基づく伝説を
ドイツ語訳したものがベースになっています(現地ではこの伝説にもとづくお祭りもあるようです)。
シェーンベルクがツェムリンスキー指導下にあった初期の作品の一つで、10年以上かかりほぼ100年前(1911)に完成した作品です。
第一部・第二部のオーケストレーションはすぐに完成したため後期ロマン派のわかりやすい作風ですが、第三部のオーケストレーション(特に後半)は、完成の直前に手がけられ、後のシェーンベルク独特の作風が自然に入ってきています。
それで独特の曲想なのですが、シェーンベルクを苦手にしている方にも抵抗はなく受け入れられる、この時代を知ることができる作品と思います。
日本語の解説はありませんがそれでも無理なく受け入れられるでしょう。
一時期画家を目指していたらしく作曲に戻っても資金が底をついていたから10年以上かかったようです。
この商品のカバーはその時期(1910)にシェーンベルクによって書かれた絵「landschaft」らしいです。