この作品と『風の歌を聴け』は、
芥川賞の候補になりました。
しかし、世界的に共感をよぶ作家になった現在、この2作は未熟であったとして海外での刊行を行っていない作品として知られています。
未熟な部分を読み取ろうとすれば、「テーマがない」ということになるのではないかと思われます。
物語というよりも、いわばスケッチのような文章と時間の断片をパズルのように組み合わせた構成がなされています。
未来が予測できないものであることは判っていますが、この作品では、過去も現在もそれほど確かなものではないのではないか、という思いを抱かせます。
生きているという実感が薄らいでいる都市に住む若者の”気分”の描写に成功した作品ではないかと思うのです。
村上氏の作品は多分に作者を想像させられます。
主人公鼠が町を出ようとする件などを読むと、村上氏が専業作家になる為に経営していた
ジャズ喫茶を手放したことと結びつけてしまうのです。
瑞々しさが感じられ、とても好ましいと思っています。
何で知って買ったか忘れましたが、アマゾンもインターネットもない時代に手に入れた本です。
内容は前半当時わりとポピュラーだったマシンをカラーで紹介したり、ピンボールの歴史、プレイテクニック、
パーツの名称、用語辞典など、ピンボールマシンについてのほぼ一通りの薀蓄が載っています。
iPad miniのPinball Arcadeというゲームが実機を再現していてなかなか面白かったので、この本を引っ張り出して
読んだ次第です。
あと村上春樹さんのエッセイも載っていますが写真入りで6ページ程なので、個人的には村上春樹本というより
ピンボールファンとしてゲストで寄稿しただけの様に思います。
また刊行も1989年で、まだ
新宿や
渋谷のゲームセンターにマシンがズラリと並んでいた時代の情報なので、今では
大分内容が違う箇所もあります。(当然台の紹介も刊行以降に出たものは載っていません)
定価が3,700円なのでピンボールファンなら一万円出して買っても役に立つかとは思いますが、3〜4万円も出すほど
の希少価値は少ないと思います。(ただこのジャンルの本はほとんどないんですよね)