大リーグのグレッグ・マダックス投手(39歳)は、1988年から毎年15勝以上している。脅威の17年連続である。150キロ以上の速球をバンバン投げるわけでもなく、ただひたすらコースを丁寧に投げ分け、打者の裏をかき、そしてコンディションを毎年整える。
ここ最近日本のピッチャーで、毎年二桁以上上げている投手はほとんどいない。怪我なり不調なりして連続して二桁勝利がなぜできないのだろう?一昔と違い、ピッチャーの寿命は伸びていることは伸びている。コンディション維持のための様々なト
レーニングや知識を工藤投手や桑田投手、野茂投手などが広めた功績が大きいかもしれない。しかし残念ながらそんな彼らも10年という単位では連続して活躍することはできていない。
そんな中11年連続で二桁勝利を挙げたピッチャーが、星野伸之である。130キロ台の速球とカーブ、フォーク、この3種類のもち球で日本の打者を翻弄した。
プロ野球生活19年
通算176勝 2041奪三振 防御率3.64
最高勝率2回
2002年に引退
星野投手とマダックス投手に不思議と共通点が多い。二人とも速球のスピードは速くないものの、
バッター速く見せることには長けていた。(現に近鉄時代のローズと中村選手は、「日本で一番速い速球を投げる」と評していた。)二人とも変化球とコントロールが抜群であると共に、打者心理の裏をかくのが絶妙にうまい。そして残念ながら、二人ともマスコミになぜかあまり取り上げられない....こんなに活躍し続けることはすごいことなのに、残念ながら速球派投手に主役は奪われてしまう。
しかしよくよく考えてみよう。西武の松坂やヤクルトの五十嵐投手のように速球をバンバン投げられるピッチャーの絶対数は、日本ではどうしても少なくなる。悲しいがなこれが現実だ。しかし、130キロの速球を投げるピッチャーは日本には五万といる。なのにそんな彼らと同じスピードで投げた星野投手は何故かクローズアップされない。つくづくヘンな話である。
この本は、そういう意味でも星野投手の考え方や育った背景が盛りだくさん詰まった貴重な本である。確かに彼と同じスピードで投げるピッチャーは日本にゴロゴロしているかもしれないが、あのカーブを投げられるピッチャーは少ないかもしれない。(日本ハムの正田、大リーグで言えばジート投手などが似た系統だろうか?)しかし、この本には彼のカーブの秘密も明かされている。さらに、彼の視点からみた他の有名ピッチャー(松坂、斉藤雅樹、西崎幸弘、村田兆治など)のウィニングショットの解説やイチローや山田久志などとの現役時代のエピソードも含まれている貴重な本である。
さて本人のことにも触れると、彼の成功の秘密はざっとこんなところだろうか?
シンプル・イズ・ザ・ベスト
持ち球を絞り込み、その球種を最大限に活かす方法を考えた
ポジティブ思考と発想の切り替え
シンプル・イズ・ザ・ベストともつながるが、物事を必要以上に複雑に考えることなく、調子が悪くてもそれを逆手に利用することができた。それがメンタル及びフィジカルな体調維持にもつながったのだろう。
さらに、高校の途中まで本格派を目指していたのに、独特のフォームとカーブを試行錯誤の中から編み出し、ピッチングスタイルを変える辺りも彼の発想の転換がもたらしたものであろう。
山田久志の影響
同じく長寿投手であった山田久志から教わった経験が大きい。それは独特のランニングによる調整方法や投球術など多岐にわたる。
キャッチボールとコントロール
とにかくキャッチボールを大事にしたと書いている。そして組み立ての基本はアウトローであると。
このほかに、打者との心理戦やなぜ遅い速球が打たれないかなど本人の解説が多く含まれている。ここで全て紹介してしまうよりも、実際に読んだほうがいいこと間違いなし。
前にも述べたように、日本で130キロ台の速球を投げる人の絶対数は多い。そんな彼らに勇気と知恵を与える存在でありながら、残念ながらあまり取り上げられることのない星野伸之。そんな彼の秘密に迫りたいなら、是非オススメの一冊である。しかし全てが解明できるかというと、野村監督曰く「芸術にデータは不要や」ということになってしまうので、理論では解明しきれないのかもしれない。いずれにせよ参考になることは間違いない。そして最も隠された重要な点は、そんな130キロ速球ピッチャーをステレオタイプに切り捨てることなく活躍の場を与えた、旭川工業高校の斉藤先生や仰木監督などの指導者でもあるのだろう。今後、星野伸之の芸術が語り継がれることを期待しよう。
さーっと聞き流すと気持ちのいいアルバムです。
僕は今まで主体的に、言い換えると「聞こう、聞こう」と肩に力を入れて音楽を聴いていました。しかし、このアルバムを聞いて、無意識に、心をからっぽにして聞くのがよい音楽もあるのだなぁ、と思いました。僕のこのレビュー
タイトルの意味もこういった意味合いでつけました。衝撃的ではないけれど、何となく心が落ち着く曲で構成されている、今までにないジャンルの、とてもよいアルバムだと思います。