『考える練習』と題が打たれているが、インタビュイーである保坂さんがインタビュアーである若手(と中年の狭間の)編集者とインタビューならぬ雑談をまとめた本。
哲学的に存在や時間を考えるのではなく、どちらかというと
ソーシャルでエコロジカルな話といつもの小説論や読んだ本の話が多く、項目立てが1〜2ページごとなされていることからも分かるように脱線につぐ脱線である。
読後にはこれといって何も銘打たれることはないが、凝り固まった脳を弛緩する一服の
清涼剤にはなる。本当に「考える」練習をしたければ西田幾太郎に始まって大森荘蔵、永井均、入不二基義、池田晶子を読むといい。
保坂和志のデビュー作。「何を書くのか」を充分に推敲してから書き始めた作品だと感じる。それは事件でもなく、出来事でもなく、「思考そのもの」なのだ。語り手を取り巻く登場人物も興味深い。
猫のことなら何でも言い当てる学生時代の友人ゆみこ。何かを積み上げていく思考のなさを感じる競馬仲間の石上さん。世界観のようなものが奇矯な思い込みのうえに成り立っている同じく競馬仲間の三谷さん。語り手の部屋に突然転がり込んでくる面々もすこぶる個性的だ。しつこくしゃべり続けて調子にのり続けるが、実は遊園地にも海にも行ったことがないアキラ。風呂からあがったばかりで顎を上に向けながらワイシャツの一番上のボタンをとめる島田。黙々と近隣の野良
猫に餌をやりにいくよう子。作者の分身のような、この作品の解説者のような、ビデオをまわすゴンタ。保坂和志の会話文は素晴らしい。地の文では思考を、会話の文ではその技巧を堪能できる。最初の第一文から最後の最終文まで味わい深い。「プレーンソング」とは「単旋聖歌・典礼歌・グレオリオ聖歌」や「神の恩寵」という意味。解説は11版までは四方田
犬彦、12版から石川忠司。